【意識調査】クリニックにおける2022年“夏”賞与の傾向とは
解説:日本経営ウィル税理士法人
宮前尭弘
2019年夏季賞与との係数(基本給の〇ヶ月分)の比較
100%以上 |
20%(56件) |
100%程度 |
62%(175件) |
90%程度 |
4%(11件) |
80%程度 | 1%(2件) |
70%程度 | 1%(1件) |
60%程度~10%程度 | 0%(0件) |
例年通り支給なし | 12%(35件) |
※n=280件、昇給による増加分は考慮せず賞与係数にて比較
クリニックの収入は2019年と比較して回復傾向に
クリニックの収入は、前回の調査から継続して回復傾向になりました
当社のお客様への調査によると、2020年春の緊急事態宣言下から続いていた来院患者減少も、感染状況が収束していくにつれて、落ち着きを見せています。データによるとほとんどのクリニックが回復傾向にあります。
2022年4月の保険診療収入は、全診療科平均でコロナ禍以前の2019年4月と比較して約100%という結果となりました。
診療科目による回復傾向の違い
耳鼻咽喉科・皮膚科でいまだ1〜2割の影響が残る
※当社調査(2022年4⽉と2019年4⽉の単⽉の保険収⼊の⽐較 / n=350件)より
小児科:98%
耳鼻咽喉科:82%
消化器内科:116%
外科:96%
眼科:109%
皮膚科:90%
整形外科:99%
歯科:110%
内科:100%
心療内科:101%
診療科目による違いはどうでしょうか。
2020年に影響の⼤きかった診療科⽬である⼩児科・⽿⿐咽喉科は、どちらも回復の兆しはあるものの、コロナ禍で新たに設けられた加算により保険収⼊を確保できている⼩児科と⽐べて、⽿⿐咽喉科では2022年1⽉に⼊り感染者数増⼤による診療抑制が始まると、保険収⼊減少に直結したクリニックが多く⾒られます。
消化器内科・眼科・整形外科・内科は、2020年に⽐較的影響が⼤きかった診療科⽬でしたが、2022年4⽉単⽉ではコロナ禍以前と⽐較して同程度か、それ以上の保険収⼊となっているクリニックが多くみられます。
⼀⽅で、⽪膚科・⼼療内科は2020年における患者数の減少が緩やかでしたが、⼼療内科は堅調に収⼊維持しているものの、2022年4⽉単⽉では⽪膚科は2019年を下回るケースもみられます。
また、外科や⻭科はやや影響が残っているものの、ほぼ回復しているケースが多いです。
今年の賞与をどう考えるのか
当社の顧客アンケートデータから⾒える傾向 2019年より増額は20%
280件の医科・⻭科クリニックに2022年夏の賞与の係数をどのように設定したかアンケートを⾏ったところ、全体の約62%を占める回答は「 2019年の賞与予算の100%程度 」であり、そのほとんどが、2021年の冬季賞与予算を「例年通り⽀給する」と回答していたクリニックでした。
全体の約20%のクリニックでは、「 2019年よりも賞与予算を増額する 」との回答が得られました。
2021年において、冬季賞与における予算額を「2019年の70〜90%」に抑えており今回は増額するといったケースの他に、発熱外来やコロナワクチン収⼊の平常時にはない業務への労いを昨年に続き⾏う、とした事例がみられました。
⼀⽅で、 「2019年の賞与予算の70〜90%程度」 と回答した全体の約6%のクリニックは、現在もコロナ禍による影響を受け減収しているケースがほとんどですが、2022年の冬賞与には通常通りの係数に戻したいとする声が多く聞かれました。
賞与評価では、「在籍に対する評価」「業務品質に対する評価」「将来への期待に対する評価」など複数の視点があり、クリニックによって何を重視するかは様々です。コロナ禍で、普段とは異なる業務や患者対応が発⽣し、職員ごとの仕事への姿勢や対応⼒をあらためて把握する機会となり、昇給・賞与の評価を⾒直したクリニックもあります。
アフターコロナのクリニック経営を見据えて
このように、2022年夏季賞与の意識調査では、コロナ禍の影響が落ち着いており賞与も例年通りの水準に戻すクリニックが、前回の2021年冬季賞与の意識調査と比較して、多く見られました。
一方で、政府の方針として賃上げが進んでおり、また有給休暇取得の意識の高まりなどによる人的コストの増加を受け、求人段階から待遇見直しを余儀なくされているケースもあります。
人件費計画の見直しに着手する場合は、昇給と賞与とのバランスをあらためて検討することをおすすめします。
専門家と共に、将来を見据えた施策を検討されたい方は、お気軽にお問合せください。
参考ページ
2021年冬季賞与意識調査
2022年春季昇給意識調査
解説:医療事業部 宮前尭弘
本稿はご回答時点における一般的な内容を分かりやすく解説したものです。実際の税務・経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、税理士など専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。
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